2019年1月20日日曜日

Hiroshi Muto、PORSCHEのハンドルを握る‼︎

そのクルマを初めて体験したのは、この時

RRというクルマの成り立ちから、地面を蹴り出す感覚や、後輪を軸にグイグイ曲がっていく感覚が多分バイクに近いのでは?と、一度でいいから経験してみたいと思っていたのが PORSCHE911。

その感動は想像以上で、巌のような車体の剛性をベースに、アクセルのOFF/ONやブレーキの入力、操舵などドライバーの操作へのリニアでソリッドな反応や、クルマから伝わってくるGや路面などのインフォメーションの濃密さ。。。
その魅力にすっかりヤラレてしまったのだった。
「一度乗ってみますか?」と声を掛けて頂いていたのだが、恐れ多くて。。。




 171203 フロムセブンミーティング にて。
右の type997GT3CS が今回声をかけて頂いたT川さんの愛車





PORSCHE911GT3Club Sports (My2008 type997)
通常の911シリーズと異なる、ルマン参戦マシン911GT1の血統を引くEg。
3.6l の水冷Flat6 は415ps、最高速はカタログスペックで310kmのモンスター



その時の体験から1年が経ち、あらためて「乗ってみませんか」のお誘いの声を頂いて、抗うことなどできる訳もなく。
友人が大事に大事にしている愛車のハンドルを預かる事の重みを忘れることはないのだが、腹が据わったとでも云おうか(苦笑)

0119
自宅近くでピックアップしてもらって(驚)、R9から京都縦貫道〜千代川ICまでは、オーナーT川さんの運転。
高速を降り、南丹日吉のベーカリーカフェまでステアリングを預けて頂いた。







まず、ポジションとシフトレバー等の位置確認。
サーキット走行を意図されたバケットシートの座面は低く、相対的にABCペダルの位置は慣れ親しんでいるクルマ達よりやや高い場所にある。
だが各操作系のポジションはそれぞれ自然で、すぐに慣れてしまった。
クラッチペダルは重く、相応の踏力を要する。400psオーバーのハイパワー車である。当たり前か。
ブレーキ/アクセルペダルの操作感やステアリングも国産車と比べると重いが、これもハイパワーのスポーツカーを操ろうというのだから当然だろう。

最初の発進はあえなくエンスト(汗)
ペダルの踏力が足りず、クラッチが切れていなかったのだった。
イグニッションをOFF/ONしてもう一度。

慎重にクラッチを繋ぐ。
2nd→3rdと続けてシフトアップし、そこから4000〜5000rpm位まで踏んでみた。
ズシンと腰のあたりを後ろから蹴押されるような加速感。
緩いカーブに向けてアクセルを抜き、軽くブレーキを当てるとクルマの荷重がスッと前に移るのがハッキリと分かる。
この感覚を当てにしながら曲がりたい方向に舵を入れると、驚くべき反応で鼻先がINに入っていく。
しかも極めて正確に狙ったラインの上にフロントがある。
4425×1810のボディサイズが一回りもふた回りも小さく感じられるようなクイックさ。
さらにアクセルを踏み込めるようになると、中速域より上からのEgの回転落ちの素早さを利して、そこから発生する絶妙のピッチングの動きをターンインのきっかけに使おうという気持ちになってくる。
加えて、フロントフェンダーの形状。
フロッグアイ(カエルのお目目)で知られる911の「顔」。このヘッドライトからフロントフェンダーを経てAピラーに続く稜線のおかげで、フロントの車幅感覚やFタイヤの位置関係が分かりやすく、それこそ、ロドと同じような感覚で鼻先を向けて行けるのだ。。。
911や'60年代頃のレーシングカー≒スポーツカーのボディ形状、コクピットからの眺めが、以降の原点になっているのだろうね。

旋回に入っていく。
素早い回頭性もあって、あっという間に旋回し終わっている感覚。
もう少し丁寧に言うなら、先に書いたように、ボディサイズを感じさせず、小さくクルッと向きを変える。その後直ぐ、後輪の方からアクセルONのサインが来るような感覚だ。
それに従ってアクセルを入れる。すると、外側の後輪を軸足に今度は進行方向への強力なGが立ち上がっていく。

緩いコーナーでは、横方向へのGを感じていられる時間がやや長い。
狙ったラインに正確にフロントが乗るのと同時に、リヤタイヤの横Gを感じながらアクセルペダルの入力を決めていく。
2350mmのホイールベースのちょうど真ん中に座るから、自分を中心に自然に車体が向きを変えていく。RRだからと言ってリヤを振り出すような感覚はこの程度の速度では顔を出さない。普通に公道を流しているくらいの速度域では極めてニュートラル。

前回助手席に乗せて頂いた時にも、減速Gから横Gへ、横Gから進行方向への縦Gへといった荷重の受け渡しの情報がとてつもなくダイレクトでソリッドとの印象だった。
その時の印象が、そのまま自分自身が起こしたクルマに対してのアクションと連動して起こっている。
このリニア感!! アクションに対して間髪入れず、ロスなくダイレクトに車が反応してくれる感覚と言ったら。。。

あまりに楽しくて、あっという間に前走車が出始める。

前の車に合わせて普通の速度域で普通に走っている時、911GT3は”普通に乗用車している”(笑)
何かに対して過度に緊張を強いられる事もないし、左肘をドアトリムに乗せながら(右ハンドルだとセンターコンソールなのだけれど)助手席のT川さんと普通に話をしている。
さらっと書いているのだが、このドアトリムの作りや、絶えず目に入ってくるメータ類、Aピラーetc、、、演出めいた飾り付けは一切なく、ドライバーの邪魔をせず視線や体にフィットしてくる。
この辺もさすがに良く分かってるよね。
以前T社(Lブランド)の上級セダンを運転していたことがあるのだが、静粛性やそこここにある小物入れなど「ふぅん」と思わせるものはあったが、Aピラーの内側の厚ぼったさがカーブの度に絶えず視界に入って、ものすごく”気持ち悪かった”印象が残っている。
ボディ形状も、ライバルと目されるMBのセダンに比べ、実寸よりもどてっとして大柄に感じたものだ。

乗せていただいたtype997GT3CS の室内は、革、樹脂、カーボンと言った複数の素材の黒にグレーのアルカンタラ、アクセントにボディと同色のセンターコンソール。全体にはモノトーンで落ち着いている。
イタリア車のように、いちいち格好良くデザインされた感こそ少ないが、質実剛健、ドライビングに集中できる素敵な室内だと思う。

”普通に乗用車している”と書いたものの普通ではないところも。
レーシングマシンさながらスポーツ走行に不必要な遮音材を排されたボディは下周りに当る小石の音まで車内に伝えてくる。
サーキット走行まで前提にされた足廻りは硬質。カキンという金属音。
路面のアンジュレーションを正確になぞり、踏んだ小石の感覚までも伝えてくれそうな感じだ。”普通の乗用車”に慣れた人、例えばうちの家内などからすれば
「ゴツゴツしてお尻痛い」「クルマ跳ねる、腰にくる」「音うるさい」と言ったところか(笑)
確かに”工事現場のような場所”では乗り心地悪くて、跳ねるし、フロントの接地感薄い(爆)

見通しの良い白破線で前走車を追い越そうとする時、GT3はバイクのような動きを可能にする。
3.6の FLAT6はパワフルさもさることながら、驚くほどフレシキブル。
大排気量車にありがちな、アクセルを踏んでからパワーが出るまでのタイムラグ、もっさり感とは無縁。
右足に直結するかのようなピックアップで、必要な時に必要な分パワーが立ち上がる。
加えて世界最高の性能を持つブレーキはコントロール性も抜群。
左→右、右→左へのレーンチェンジも瞬時に終わってしまう。
車体の動きに無駄がなく、そのまま瞬間移動で左右にスライドしているかのような感覚だ。
結果、バイクを操るような自在の加減速で、あっという間に追い抜きが完了する。

もう、口を開けば「いやぁ〜凄!!」
他の言葉が出てこない(苦笑)




南丹市日吉のベーカリカフェ「ゾンネ ウント グリュック」さん。
昨年一昨年のフロムセブンミーティングの時に寄らせていただいている。



薪ストーブの前のテーブルにて
あったかいスープを頂きながら、クルマ/バイク談義(楽)



それにしても、911GT3 を運転させていただいての感想だが、ここまで書き連ねた「凄さ」もそうなのだが、「懐の奥深さ」にすっかり魅了されてしまったようだ。

もともとを考えると、リアエンジンリアドライブという PORSCHE911のレイアウトはスポーツカーというには無理がある。
長いスポーツカーやレーシングカーの歴史の中でもこのレイアウトを手懐けたのは、911と ALPINE A110だけ。
時代時代のスポーツカーに要求される性能のアップと排気量拡大の中で、愚直なまでに改良を繰り返し、”911”を作り続けてきた。
その積み重ねの中で、眼に映るもの、目立たなくてなかなか見えないもの、手応えや乗り手への情報としてのフィードバックと言った  ”PORSCHE のクルマ作りの当たり前” がクルマに詰まっている。
このあたり、なんと言おうか、”マーケティング” の必要性や ”仮想敵” を想定して後から出て来る製品たちとは何か違うよなぁ。。。
飛ばした時の刺激の強さだけではない、ゆっくり走っている時も、停まって佇んでいてさえ、「PORSCHE だなぁ」と思えたり。
特別なスキルを持つ訳でない僕のようなドライバーでも運転相応の、時にそれ以上のフィードバックを与えてくれて、それがまたスポーツカーを運転する楽しさを倍増させてくれる。
「凄いなぁ。。。」





「ゾンネ ウント グリュック」さんの店内から。



「ゾンネ ウント グリュック」さんを後に、気持ちよく走れるルートを求めて、元来たルートから R372〜R423へ。
思ったより交通量が多く、楽しみにしていた法貴峠の登りはキャリアカーを先頭に何台もの後ろに閊えてしまった。
目指した、能勢・妙見山の「本瀧寺」は西日本初のバイク寺⁉️なのだとか。
ここの「ほんたき山のカフェ」で、軽くお茶タイム。




ゴルフ場がいくつも連なるこの付近。
前が閊えなければ、もっと楽しく走れたのだが。。。



後ろ姿も美しいのだが、真横からの姿も流れるようなルーフのラインが伸びやかで美しい。
軽くスラントされた低いノーズは空力の効果も相当に高いのではないだろうか。




昨日のものではないが、以前訪れた時(171223 w/ roadster)のカフェからの眺め



「ほんたき山のカフェ」さんでも、暫しクルマ/バイク話を楽しんだ後、帰路へ。
ここまでのワインディングで前に閊えてしまって、もう少し”踏みたい”なぁと思っていたのを察して頂いたみたい。
「帰りの(京都)縦貫も乗ってみます?」との言葉に遠慮の「え」もなく、「いいですか〜(嬉)」




R423〜R372の下道だけでなく、京都縦貫道の亀岡〜沓掛まで、ハンドルを預けて頂いた。



京都縦貫道も交通量は多く、すぐに前走車に追いついてしまう。
空いたスペースでアクセルを踏み込んでみるが、回せたのは6500rpm辺りまで。
だが、6000を超える辺りから怒涛の加速が始まる。
高速道路の3桁に入る頃の速度域でのレーンチェンジもフロントはガッチリ安定、ブレーキもコントローラブルで。。。

高速を降りコンビニの駐車場に滑り込んで、ステアリングをT川さんにお返しする。
「どうでした?」
「頭、真っ白ですよ〜」
これまでの車歴がライトウェイトが中心の僕には、400psオーバーのパワーがもたらす怒涛の加速もそうなのだが、一日の大半のハンドルをお預かりした”全体の印象”を言い表す言葉がすぐに思い浮かばなかったのだ。
思ったのは、これだけ凄いクルマを「乗ってみますか?」のご厚意に甘えて、動かせてしまってるんだよなぁ。。。(3速を1速とミスして、途中、何度かエンストしたけれど)

「むちゃくちゃ 懐深いですよね」

先にも書いたように、本来、限られた人が限られた場所でしか発揮できないようなパフォーマンスを持つマシンであるにもかかわらず、特別なスキルもない僕のような素人ドライバーにさえ相応のフィードバックを与えてくれる。
「運転が上手くなった、と思わせてくれる」ような類とは違う。
むしろ、「ミスしたなぁ」とか「もう少し〜すればよかったかな?」と未熟なところを突き付けられる気がする。
にもかかわらず、鼻をへし折られて「もういいや」と嫌になるのではなく、もっと上手に乗りたい、もっとこのクルマのパフォーマンスに近づいてみたい、引き出してみたいと心底思わせてくれる。。。

RRという、数多ある自動車の中でも今や特殊なレイアウト。
先にも書いたように、殊、スポーツカーには本来不利なレイアウトだと僕は思っている。
エンジンというクルマを構成するパーツの中で最大の重量物をリアに積む。
後輪に思いっきり重心がかかるからトラクションには有利だけれど、ネガもある。
振り子(慣性)の理屈で、リアが流れるようなことがあればそれを御するのは難しくなる。
また、そのままなら、後ろが重いのだから操舵を受け持つ前輪への荷重も難しいだろう事も想像できる。

エンジンレイアウトもまた特別。
水平対向の6気筒 = FLAT 6 。
BOXERエンジンは、かつてFerrariもF1マシンや市販スポーツカーに採用したレイアウトだが、未だにこの形式に拘るのは4輪ではPORSCHE とスバルだけ(だと思う)。
クランクケースより上に重量物がないから低重心化はできるが、Eg自体を小さく軽量に仕上げたり、現代のクルマのように、全体のパッケージングでパフォーマンスを上げていくには難しいEg形式だろう。

普通に考えれば、出来上がるのは、(超)低重心で、座った腰のあたりを後ろからドカンと蹴飛ばされるような、荒々しい(ある意味男らしい)とも言える加速感。
その代わりに、その時その時の状況によってアンダーステアやオーバーステアが代わる代わる顔を出すような、とんでもなくピーキーなじゃじゃ馬だ。

そんな組み合わせのはずなのに、この"911" というマシンときたら。。。

しかも、このGT3 ClubSports というパッケージ。
911が持つ強力強靭な「軸足」を、ドライビングするという行為を、スポーツとして捉え楽しむ人のために、無駄を排し、その筋力や全身の運動神経や相棒であるドライバーへのインフォメーションを最適化した仕様だったりする。

「もっと、これ(=911)を振り回せるようになれたら面白いだろうなぁ」



そのパフォーマンスを誇示するだけでなく、その歴史までも感じさせてくれるクルマ、そこに携わったエンジニアや開発者の意地や思いまでも感じさせるクルマ。
何気ない動きの中に、その先のパフォーマンスを予感させてくれるようなクルマ。
口当たりの良さの味だけではなく、香りだけではなく、深みや円熟味まで思わせてくれるような。。。
自分もその域に辿り着きたいと思わせてくれるような。。。

今回運転させて頂いた、PORSCHE 911(type997)GT3 CS、まさしくそんなクルマだったのでした。




「ゾンネ ウント グリュック」さんにて。
ルーフからリアフェンダーに流れるライン、丸みを帯びたヒップラインの美しさが際立つアングルだと思う。いかがですか?

大切な愛車のハンドルをほとんど一日預けてくださったT川さん、感謝感謝です。
ありがとうございました!!


2 件のコメント:

  1. 一か月も経っての超遅コメントすみません。
    GT3!! ポルシェは本当にドライビングが楽しいと聞いてはいましたが、凄いですね!
    VFR750Fはポルシェをイメージして開発された(!)と聞きましたが、
    2輪、4輪、車の特性は違っても、公道上で運転すること、走ることを突き詰めていった世界の
    一つの典型として、こうしたマシンが存在することは、なんだか、とてもわくわくします。
    まだまだ、奥が深いですね、乗り物って。


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    1. >樹生和人さん
      友人の好意で貴重な体験ができました。
      >>公道上で運転すること、走ることを突き詰めていった世界の一つの典型〜
      まさにおっしゃる通りで、GT3というこのモデル、その突き詰め方が尋常じゃなく、さらにそれがドライビングプレジャーにまで昇華される様は鳥肌ものでした。
      VFRのエピソードは、言われてみれば!!
      RCだったか別の雑誌だったか定かでないですが読んだような気がします。
      装飾をストライプだけにした純白のボディもそれだったかと。

      それにしても、
      単にマーケティングのための技術ではなく、マシンが育ってきた歴史や必然、エンジニアの矜持まで感じさせ、
      乗り手の魂(ちょっと大袈裟かもしれませんが)まで揺さぶられるようなマシンがある事、本当にワクワクしますね。
      『まだまだ、奥が深い』激しく同感です。
      コメント、ありがとうございました!!

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